私が本物の令嬢です!

「お父さま、お母さま、ハグしているの?」
「ねえ、あたしも! あたしもして!」

 娘たちに飛びつかれて、セオドアがひとりを抱き上げると、フローラはもうひとりを抱きしめた。

「お父さま、もっと高い高いして!」
「ほら。ずいぶん大きくなったなあ」

 セオドアと娘が笑い合う姿を見て、フローラは涙ぐんだ。


「お母さま、泣いてるの?」
 ともうひとりの娘が困った顔をした。

「泣かないで。そばにいるから」
「ありがとう。こんな可愛い娘たちに囲まれて父さまも母さまも幸せだわ」
「お母さま、大好きよ」

 フローラはもう一度娘をぎゅっと抱きしめた。

「あーん、あたしも!」
 とセオドアに抱かれていた娘がフローラのもとへ飛びついた。

 フローラがふたりの娘を抱きしめると、セオドアは3人を包み込むように抱きしめた。


「幸せだな」
 とセオドアが言った。

「幸せね」
 とフローラが言った。

「しあわせ!」
「しあわせしあわせ!」

 ふたりの娘たちも同時に叫んだ。


 アストリウス公爵家は今日も、穏やかな日々を大切に過ごしていた。


〈 完 〉
< 97 / 97 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:35

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

表紙を見る
表紙を見る
表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop