私が本物の令嬢です!
「お父さま、お母さま、ハグしているの?」
「ねえ、あたしも! あたしもして!」
娘たちに飛びつかれて、セオドアがひとりを抱き上げると、フローラはもうひとりを抱きしめた。
「お父さま、もっと高い高いして!」
「ほら。ずいぶん大きくなったなあ」
セオドアと娘が笑い合う姿を見て、フローラは涙ぐんだ。
「お母さま、泣いてるの?」
ともうひとりの娘が困った顔をした。
「泣かないで。そばにいるから」
「ありがとう。こんな可愛い娘たちに囲まれて父さまも母さまも幸せだわ」
「お母さま、大好きよ」
フローラはもう一度娘をぎゅっと抱きしめた。
「あーん、あたしも!」
とセオドアに抱かれていた娘がフローラのもとへ飛びついた。
フローラがふたりの娘を抱きしめると、セオドアは3人を包み込むように抱きしめた。
「幸せだな」
とセオドアが言った。
「幸せね」
とフローラが言った。
「しあわせ!」
「しあわせしあわせ!」
ふたりの娘たちも同時に叫んだ。
アストリウス公爵家は今日も、穏やかな日々を大切に過ごしていた。
〈 完 〉