おいらんっ道中らナイス！

出立

　父親との別れから

まだ日も浅い

秋のある日。



またひとつ。



　忍と

家族の別れのシーンが

あった。



「母ちゃん、ほら。



　あたし、

　泣いてないよ？？

　ホラ



　見てよっ

　母ちゃん！！

　ほらあ。」



　前掛けで顔を覆う母に

忍はやさしく

声を掛けた。



　「ねえやんもしんじゃうぅー

　しんじゃうぅーっ」

　腰に抱きつき

泣きじゃくる弟、

妹達に、



「ばっかだなあ

　ばっかだなあー！」

と忍は頭を撫でまくった。





　「んじゃ。

　あたし行くよっ！」


　忍は

軽く手を振り

歩きだした。





　しばらく歩いて。



「女弦さん

　ちょっと

　いいですかー」



　言うなり

忍は

その場にしゃがみ込んで、

泣き出した。

わあぁー！！





「ちっ」



　女弦は、

舌打ちして、

つまらなそうに、遠くを見やった。