おいらんっ道中らナイス!
身請け
 遊廓の廊下。

先日の。
店先で、忍に水をかけられた旦那さんが
ある一室の前を、通りかかると



 中から、
陽気な、忍の笑い声が
漏れ聞こえた



 お座敷では忍が

ちょうど
着物の裾をまくり
赤ジュバンで尻文字を書いているところだった。



よろめいて。



思わず、
一歩だした爪先で
相変わらず、
豪華なごちそうの並んだ御膳を
返してしまったが。



忍は「ちら」と見ただけで
引き続き
陽気に、おどけてみせていた。



(年に一度の、生まれ月

誕生の祝いすら、

来ないで

なにが親か。
なにが、
生まれてくれて有難うだっ!)





 先日

もう初めの約束の
奉公も明ける
といった

心待ちにしていたある日。



忍は

ふたたび

女将さんから呼ばれ。



忍の母親が尋ねて来、

弟の
進学のため入用なので
重ねて。

借金を、
申し入れたこと。
母親は、

会わす顔がないと
そのまま
帰って行ってしまったことを、

大急ぎで



忍と目を合わすことなく、
足早に伝えた女将の表情を
繰り返し思い出していた。








< 8 / 28 >

この作品をシェア

pagetop