推し作家様、連載中につき。
「通話アプリってことは、声だけ?」

「そう。声だけ」

「じゃあそのお相手は超イケボってことですな?」

「いや、違うけど」


……違った。


「でも、男の人なんでしょ?」

「うん、まあね」

「同い年? それとも大人の人?」

「そういうのは明かしてないし、明かされてないからわかんない」

「あぶなっ!」


 そう?と首を傾げた羽花ちゃんはあまり危機的に思っていないみたいだ。


 なにかあったら私が絶対守らなきゃ。

 そんな小さな決意をカフェにて。



 ぐっとこぶしを握りしめた私に、少し視線をやった羽花ちゃんは、薄くて形の良い唇を静かに動かした。


「名高先生のどういうところが好きなの?」

「え? 興味持っちゃう? 私に語らせちゃう?」

「あ、いや。ほどほどでいいけどさ」


 私の圧を二つの目で見てギョッとした羽花ちゃんにぐぐぐと詰め寄る。


「まず、あの繊細な描写は……」



 そこから1時間、私はみっちり名高先生の良さを羽花ちゃんに話し続けた。

 へへ、にへへと顔をキモチワルク崩しながら。


 名高先生の良さを存分にきいた(語らせた)羽花ちゃんは、終盤寝そうになりながらも、なんとかうなずきを返してくれたんだ。

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