シンデレラ・ウェディング

見えない未来



ガチャ


玄関を開けると聞こえてくる賑やかな声。


視線を下ろし、男物の革靴があるのを確認して納得した。


ふぅ、と一息吐いて大きなリビングの扉を開けた。


「ただいま帰りました」


「あ〜やっと来たぁ。鏑木帰っちゃったから早く充さんにコーヒー淹れて」


「・・・はい」


お姉ちゃんに言われ、足早にキッチンへ向かう。


広くて綺麗なキッチン。


綺麗に片付いているのは、決して彼女たちが片付けたわけではない。


私が仕事から帰るまで、家で執事として働いてくれている鏑木さんのおかげだ。


コーヒーメーカーにカップをセットしスイッチを入れた。


あれ、昨日作っておいたクッキーのお皿がない。


キッチンからダイニングテーブルを覗くと、テーブルの真ん中にあと一つだけクッキーが残ったお皿があった。


それを確認してコーヒーメーカーに向き直り、ひとりほくそ笑んだ。


食べてくれたってことは美味しかったってことだ。ふふ。


お菓子作りが生き甲斐の私にとって、これは嬉しい出来事のひとつだった。


< 1 / 24 >

この作品をシェア

pagetop