シンデレラ・ウェディング
見えない未来
ガチャ
玄関を開けると聞こえてくる賑やかな声。
視線を下ろし、男物の革靴があるのを確認して納得した。
ふぅ、と一息吐いて大きなリビングの扉を開けた。
「ただいま帰りました」
「あ〜やっと来たぁ。鏑木帰っちゃったから早く充さんにコーヒー淹れて」
「・・・はい」
お姉ちゃんに言われ、足早にキッチンへ向かう。
広くて綺麗なキッチン。
綺麗に片付いているのは、決して彼女たちが片付けたわけではない。
私が仕事から帰るまで、家で執事として働いてくれている鏑木さんのおかげだ。
コーヒーメーカーにカップをセットしスイッチを入れた。
あれ、昨日作っておいたクッキーのお皿がない。
キッチンからダイニングテーブルを覗くと、テーブルの真ん中にあと一つだけクッキーが残ったお皿があった。
それを確認してコーヒーメーカーに向き直り、ひとりほくそ笑んだ。
食べてくれたってことは美味しかったってことだ。ふふ。
お菓子作りが生き甲斐の私にとって、これは嬉しい出来事のひとつだった。
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