シンデレラ・ウェディング
「え・・・社長・・・?」
お姉ちゃんは口に出したが、私もお母さんも同じ気持ちだ。
あおくんが、blue tearsの、社長・・・?
うそ・・・
「夏目逢生。老舗宝石店、NATSUMEのご子息であり、現blue tearsの社長でございます」
鏑木さんが、穏やかに告げた。
「そ、そんな方が・・・なぜ、うちの莉央を・・・」
お母さんが恐る恐る尋ねる。
「うちの莉央?ふざけないでもらいたい。莉央はあなた達のものではない。鏑木の言う通りだ。ここに長居は無用のようだね。行こうか莉央。鏑木、ドレスを頼む」
「かしこまりました」
鏑木さんは素早くドレスの箱に蓋をすると、ひょいと持ち上げた。
あおくんは私の右手を引いて、背中に手を添え歩き出す。
「えっ・・・あおくん、どこへ行くの?私、荷物も何も持ってない」
「大丈夫だよ、莉央。鏑木が全部完璧にやってくれるから」
「はい。莉央さんお任せください。絵本も全て新居へ運びますからね。ご安心ください」
鏑木さんはいつも以上に優しい笑顔で微笑んでいる。