シンデレラ・ウェディング
それから毎日絵本を読んだ。
あおくんに会えなくてすごく寂しかったけど、絵本を開く時間だけは悲しいことも辛いことも忘れることができた。
半年くらい経ったある日、いつものように絵本を開いているとお姉ちゃんが部屋に入ってきて、急に私の絵本を取り上げた。
「何これ。ふーん、もしかして、王子様が迎えに来てくれるとでも思ってるわけ?」
「返して」
「いやー」
「返してよ!」
「なによ、その態度。ちょっと可愛いからって調子に乗らないでよ!あんたにこんなもの必要ないでしょ!」
ビリビリビリっ
「あぁ!」
「ふん、あんたが夢なんか見るから悪いのよっ」
そう言って破いた絵本を床に投げると部屋を出て行った。
私はその場で泣き崩れた。
私が何したって言うの・・・・・・っ
悔しくて、悲しくて、涙をポタポタと床に落としながら破られたページを拾い集めた。
コンコン
開けっぱなしの扉がノックされて顔を上げると、鏑木さんが立っていた。
「おや、これは大変。莉央さん、少々お待ちください」
そう言ってまたどこかへ行ったかと思うと、セロハンテープを持って戻ってきた。
「さぁ、元通りに戻しましょう」
そう言って鏑木さんは絵本をテーブルに乗せるとセロハンテープでペタペタと修繕を始めた。
最近急に我が家へ執事(兼家政婦)としてやってきた鏑木さんは50歳だと言っていた。
すらっとしていてダンディだけど、優しげな顔をしたおじさんだった。
「はい、莉央さん、出来ましたよ。もう大丈夫です。莉央さんの王子様は必ず迎えに来てくれますからね」
そう言って鏑木さんは目尻にシワを作って優しく笑ってくれた。
「・・・ありがとう・・・ございます」
ひとりぼっちの私に、神様があおくんの代わりに鏑木さんを連れて来てくれたんだと思って、すごく安心したのを覚えている。