シンデレラ・ウェディング
「わぁ!え!これ・・・ヴェラのドレスじゃない!?すごいっ!!充くん!いいの!?」
お姉ちゃんはまだ箱の蓋を持ったまま、中身には触れず充さんを振り返った。
「え・・・・・・あ・・・うん・・・」
充さんは、なんとも煮え切らない返事を返す。
「あ、莉央。ほら!あんたもこっち来て見てみなさいよ!すごいでしょ?充くんみたいな人を王子様って言うのよ?」
お姉ちゃんはすごく上機嫌で、珍しく私を輪の中に招き入れた。
私も近くで見てみたくてウズウズしていたから、言われるがままドレスの入った箱の前まで来た。
「あんたは一生着ることができないドレスよ。しょうがないから近くで見せてあげるわ」
お姉ちゃんの嫌味なんて気にならないくらい、目の前のドレスに魅了された。
綺麗・・・
絵本の中のヒロインが着るドレスは毎日見てきた。
実物を目の前にして、自分のモノではないのに感動して胸が震える。
「ねぇ充くん、触ってもいい?体にあててみたい」
そう言ってお姉ちゃんは箱の蓋を床に置くと、ドレスに触れようと屈んだ。
その時、
「お待ちください」
大きくはないが凛とした声がリビングに響いた。