月がてらす道
 衝動に従って顔を近づけ、細い足をぐっと開いた。
 「────!」
 声にならない声が、みづほの体からほとばしったように感じる。そのくらい激しい反応が伝わってきた。足を支える手にも、彼女の中心に触れた舌にも。
 「は……あ、や、……んあっ」
 頭の上から漏れてくる声は、何かを我慢しきれないような苦しさと、淫らな響きをともなっている。かなり強く、感じているに違いない。初めての女にこんな声を出させている、その事実が誇らしいと思った。
 びしょびしょになった場所を舌でひと通り舐め取った時にも、みづほは足を震わせて反応した。今がきっと一番敏感な時だ、と確信し、すでに待機状態だった自分のものの準備を済ませる。
 「入れるから、力抜いて」
 肩で息をつくみづほが小さくうなずいたのを見てから、姿勢を整え、腰を前へと進めた。
 「あ、あ……っ」
 中に入った瞬間、みづほが叫ぶように声を上げる。固くつむった目元、半開きの唇、自分の反応を恥じらって顔半分を手で隠す仕草。なんて可愛いのかと、心の底から思った。
 彼女がこんなに綺麗だと、誰も知らない。その女を今、自分が抱いている。男の征服感が満たされてゆくのを感じた。だけど、まだ足りない。
 「──っ! う、うぅっ……」
 さらに進んで奥に達した時、痛みを含んだ短い呻きが聞こえた。ゆっくり腰を引くと同時に、かすれた声と、内側の壁からの反応が返る。
 初めて男を受け入れた体が、震えて収縮し、締め付けてくる動きに、理性が飛びそうになる。一度息をついて、再び奥まで差し入れた。組み敷いた体が反り返る。
 「ああっ!」
 叫びとともに締め上げられる。今度こそ理性が吹き飛んだ。初めてだという現実も気遣いも忘れて、目の前の女をただ一心に抱いた。
 外側以上にみづほは内側の感度が良く、そしてサイズが自分に適していた。突き上げるたびに震える壁が締め上げる具合が、本当にちょうど良い具合でたまらなく気持ち良い──そして痛みと甘さの混じる声と、身をよじって喘ぐ表情が、さらに欲望を刺激する。
 「みづほ」
 自然に、名前が口から出た。一時的な征服欲と所有欲かもしれないが、今はとにかく、ただこの女を独り占めしていたい。
 みづほにも、そう思われたかった。もっと強く求められたかった。
 「みづほ──俺を呼んで」
 「……ひろの、く」
 「ちがう、名前」
 「──な、おたか……っ」
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