月がてらす道
「俺のこと好き?」
「好、きっ……ああ、あんっ!」
ひときわ高く大きな喘ぎとともに、みづほの内側が締め付ける強さと震えが、増した。そろそろいきそうになっているに違いない──そして尚隆自身も。
ちゃんとゴムを付けておいて良かったと思う。この気持ち良さは絶対最後まで味わいたい。今さら外で出すなんてできない。
「気持ち、いい? このまま、いくから」
「いっ……あっ、あ────あああああっ!」
叫んで跳ねる体を、力の限り抱きしめる。深く、奥底までつながった互いが、その瞬間ひとつになった。
はっと目を開けた時、部屋の中は薄明るくなっていた。いつの間にか眠っていたらしい。
……8年前の夜、一度きりだったあの時を夢に見ていた。いや、今ではもう「一度きり」とは言えないが。
隣では、こちらに体を傾ける格好で、みづほがまだ眠っている。すうすうと寝息を立てて、安らいだ表情で。
その寝顔を見つめていると、ほんの何時間か前のことが、幻だったようにも思えてくる。それほど彼女の寝顔の穏やかさと、数時間前の情熱的な仕草にはギャップがあった。
みづほと寝たのはまだ、2度目だ。しかも8年ものブランクがある。なのに、つい昨夜もそうしていたかのように、互いの体はあっという間に馴染んだ。
それからのことは、半ば夢うつつのように感じながらも、鮮明に思い出せる。8年前の夜と同じく──他の誰とも過ごしたことのない、深く熱い時間だった。
スマホの時計を見ると6時前だ。まだ早いが、二度寝すると寝過ごしてしまいそうな気もする。みづほを起こさないように慎重に体を起こし、尚隆はベッドから抜け出した。音を極力立てないように服をかき集め、風呂場へと向かう。
……昨夜、みづほが眠っているのを見た時、最初は当然ながら困った。そっと揺らしても、わりと大きな声で呼ばわっても起きず、だからと言ってそのまま放っておくわけにもいかないし、かなり弱った。
みづほの家には一度行っているが、夜だったし、道順をよく覚えていない。タクシーで行こうにも正確な住所を知らない。となれば、自分の家に連れて帰るしか選択肢がなく……はっきり言って、耐えられるかどうかの自信がなかった。