俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
(これは、無理そうだわ)
ここから逃げ出すことを諦めると、ベアトリスは大人しく横になったまま至近距離にあるアルフレッドの顔を見つめる。
「奇麗な顔……」
初めてみる寝顔は、憎らしいくらい整っている。高い鼻梁、長いまつ毛、まっすぐな眉、ベアトリスを見つめるときは弧を描く唇。
王宮内には随所に美しい男女の石像が飾られているが、アルフレッドの容姿はそれらにも劣らないほど端麗だ。艶やかな銀髪に手を伸ばすと、サラサラの髪は指先からするりと滑り落ちた。
「お疲れ様です。殿下」
じっと寝顔を見つめていると、トントンと部屋のドアをノックする音がした。開いた隙間から顔をのぞかせたのはお茶を用意して持ってきた、侍女のソフィアだ。
「あらっ」
ベアトリスと目が合ったソフィアはハッとしたような顔をしたが、すぐに嬉しそうに表情を和らげるとそっとドアを閉めた。
(絶対、なんか勘違いしているわ)