俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
ベアトリスの様子がおかしいことに気付いたアルフレッドが、怪訝な顔をして顔をのぞき込んでくる。
「これは一体、おいくら……?」
「ビアティのためなら、安い物だ」
アルフレッドは甘く微笑むと、ベアトリスの髪の毛を一房つまみ、そこにキスをする。周囲からきゃあっという小さな黄色い声がした。
(わたくしのためなら、安い物?)
そんなわけない。安いわけがない。
なぜなら、目の前にいるのはベアトリスでも知っているセルベス国一と名高い高級宝石商──プラシコ商会の店主であり、目の前に置かれているのは伯爵令嬢であるベアトリスですら見たことがないような豪華な宝飾品だからだ。
宝石商の店主のほくほくの笑顔を見ただけで、これがどんなに高級品であるかなんて一目瞭然だ。
「俺の愛らしい妃は、喜びのあまりに声も出ないらしい。それでは、これを貰おう」
アルフレッドがふむと頷き、周囲に目配せする。すると、宝石商は気が変わらないうちに急げとばかりにいそいそと準備を整え、あっという間に商品を包んだ。
「あ、あの……」
ベアトリスは声をかけようとするが、それを無視するかのように店主は満面の笑みを浮かべる。
「この度はありがとうございました。また、よい品が入りましたら参ります」
そう言い残して去って行った店主の行動の早さたるや、目に留まらぬほどだった。一体この商品、本当にいくらなのだろうか。