俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
「思ったより早く済んだな。では、次の部屋に行くぞ」
「……次の部屋?」
ベアトリスは未だ呆然としたまま、椅子から立ち上がってこちらに手を差し出すアルフレッドを見上げる。
「舞踏会と言えば、ドレスに決まっているだろう」
アルフレッドは満面に笑みを浮かべる。
「いえ。ドレスは持っていますので──」
ベアトリスはふるふると首を横に振る。大した品ではないが、事実、舞踏会用のドレスは何着か持っている。
「べアティ。今度開催されるのは王宮舞踏会だ。それも、俺達が結婚してから初めての。どうか、今選んだ宝石にふさわしい極上の品を、愛する妃に贈らせてくれ」
「まあ、ほほほ……」
ベアトリスは乾いた笑いを漏らす。
(愛する妃って誰ですか? お飾りの側妃ですけど?)
周囲には侍女達もいるので口には出せないけれど、ベアトリスは心の中でツッコミを入れてじとっとアルフレッドを睨む。アルフレッドはその眼差しの意図に気付いているはずなのに、完全に無視して涼しい顔をしている。
さっき選んだ宝石にふさわしいドレス。一体どれだけ豪華なドレスなのだろうかと、想像するだけでも目眩がする。