俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?

 サミュエルはベアトリスの問いかけに言葉を詰まらせる。その態度でピンときた。

(さっきのメイド達の噂話、事実なのね?)

 サミュエルはアルフレッドの側近中の側近だ。そのサミュエルが事前に予定されていた会合の相手を知らないだなんて考えにくい。十中八九、ベアトリスには言いたく内容なのだろう。

「やっぱりいいです」

 ベアトリスがそう言うと、サミュエルは明らかにホッとした表情を見せた。

「……ベアトリス、なんか機嫌悪い?」
「いえ、至っていつもの通りです」

 ベアトリスは首を振る。

「そうかな……?」
「そうです」

 機嫌が悪い? 今さっき本を借りてきて、機嫌はいいはずだ。

 それなのに──。

(なんかむしゃくしゃする……)

 なんでこんなにむしゃくしゃするのだろう。
 その理由にはなんとなく気付いていたけれど、ベアトリスは敢えてそれに気付かないふりをして気持ちに蓋をした。

(あー。なんか気分転換でもしよ)
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