俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?

「どうしたのですか?」

 ベアトリスは体の向きを変え、ランスのもとへ歩み寄る。
 ベアトリスの中で、ランスを一言で表すと〝真面目で落ち着いている〟だ。ベアトリスと違って、仕事中に息抜きをしに外に出ることなど、見たことがなかった。
 仕事で、どこかに向かっているところかもしれないと思った。

「ベアトリスさんの様子がおかしいと聞いて、追いかけて来ました。私でよければお付き合いしますよ」
「わたくしを追いかけて?」

 先ほどのサミュエルとのやりとりを聞いていたのだろうか。見苦しいところを見せたと、ベアトリスは恥ずかしく思った。

「どうかしましたか?」
「いえ、たいしたことではないのですが、自分の中でもやもやすることがあって──」

 ベアトリスは言葉を濁す。
 さすがに、お飾り側妃の分際で『殿下が別の令嬢を頻繁に呼び出しているのが気に入らない』とは言えなかった。ベアトリスの様子をじっと見ていたランスは、ふむと頷く。

「では、息抜きに城下にでも行きますか?」
「え? いいのですか?」

 城下に行くことはアルフレッドから禁止されていたはず。

「はい。私がいれば」

 ランスは人差し指を自分の口元に持ってきて、秘密だよ、とポーズする。ベアトリスはその様子を見て、くすっと笑った。
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