俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
ベアトリスは目を輝かせて頷く。
郊外に行くことは滅多にないし、今日のこの機会を逃すとしばらくは行けないだろう。
「では、変装しましょう。郊外ではこの格好は目立つ」
ランスはパチンとウインクすると、ちょうど目の前にあった衣料品屋に入る。ふたりして庶民向けの服に着替えると、いつもと違う日常が始まる気がしてわくわくしてくるのを感じた。
「馬車を呼んでくるので、少し待ってください」
「はい」
頷きながらも、ベアトリスは周囲を見回した。
(辻馬車ならたくさんあるけど……)
お気に入りの馬車があるのかもしれないと待ったところで、「来ましたよ」とランスがベアトリスに声をかける。ベアトリスはその馬車を見て、目を瞬かせた。
随分と質素……、よく言えば庶民的、悪く言えばボロボロだったのだ。
「今日はお忍びなので、馬車もお忍びのほうがいいかと思いまして」
「なるほど!」
ベアトリスはぽんと胸の前で手を打つ。
「ああ、そうだ。その指輪も目立つから、外しておいたほうがいい」
「これですか?」
ベアトリスは自分の手を見る。以前、アルフレッドから贈られたローズ・クローツの魔道具の指輪が嵌まっている。