俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?

「確かにそうですね」
「なくさないように、預かってあげますよ」
「ありがとうございます」

 ランスはベアトリスから指輪を受け取り、それをポケットにしまった。



 馬車は見た目通り、あまり乗り心地がいいものではなかった。揺られながら、ベアトリスは外を眺める。
 はじめは両側に建物が建ち並び人々が行き交うのが見えていた景色は、いつの間にか田園風景へと変わる。何かの穀物が道路沿いに実っているのが緑の絨毯のように見えた。

「ランス様、今日はお心遣いありがとうございます」
「いえ、礼には及びません。最後ですし、好きなことを自由になさるのがよいかと」

(最後?)

 その言い方に、引っかかりを覚えた。

「ランス様は錦鷹団を退団なさるのですか?」
「いいえ。今のところ、その予定はありませんが」

 ランスは首を横に振る。

「そうですか」

 最後というので、てっきり錦鷹団を去るのかと思ったけれど違ったらしい。

(じゃあ、最後ってどういう意味かしら?)
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