俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
考えていると、ランスが口を開く。
「アルフレッド殿下に仕えるようになったのは、私がまだ十五歳の頃でした。あのときはまだ両親と妹も健在だった」
突然始まったランスの昔語りにやや唐突感を覚えながらも、ベアトリスは「へえ。長い付き合いなのですね」と相づちを打つ。
「ええ。アルフレッド殿下は私よりひとつ年下でしたが、年下とは思えないほど当時から聡明でした。周囲の状況に常に目を光らせ、判断も的確で速い。だから私は、妹が婚約者候補になったと聞いたとき本当に喜びました。幼いながらも妹はアルフレッド殿下を慕っていたし、アルフレッド殿下も妹を大切にしてくださっていました」
「え? 婚約者候補?」
今の話だと、ランスの亡くなった妹は元々アルフレッドの婚約者だったのだろうか?
たしか、アルフレッドには過去に三人の婚約者がいたはずだ。そして、その全員が不幸な事故で亡くなったと聞いたことがある。
(最初の婚約者候補は、ランス様の妹君だったのね)
ランスからも、彼にはベアトリスと歳頃が同じ妹がいたと聞いたことがあったと思い出す。
「……自慢の妹さんだったのですね」
ベアトリスはどう答えていいかわからず、無難な言葉を返す。
「ええ。本当に。美しくて、聡明で、優しくて自慢の妹だった。未来の王妃にふさわしいね」
「……ランス様?」
言い方に棘を感じ、ベアトリスは困惑する。