俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?

「陛下は妹が亡くなったとき、ひどくショックを受けた。そして、その後五年間の間、婚約者を決めずにいた。なのに……二十歳になられたとき、そろそろ婚約者を決めたいなどと言い出した」
「それは仕方がないことではないでしょうか?」

 アルフレッドは王太子だ。彼には、自分の次の王となる世継ぎを作る義務がある。それに、あまり妃を迎えるのが遅くなると政治的な紛争の種になりかねないのだ。

「仕方がない? とんでもない考えだ。殿下は独身を貫くべきです。なぜなら、殿下の隣に立つにふさわしい女性は私の妹しかいないのだから。彼女の亡き後、ほかの人間に代わりを務めることなどできません」
「それは──」

 間違っているわ。
 ベアトリスはそう思った。

 ランスの妹は彼が言うとおり、きっととても素晴らしい女性だったのだろう。けれど、彼女が亡くなったからアルフレッドに独身を貫けというのは筋が違う。

「だから、ベアトリスさんもそろそろ殿下の前から消えてください。最近の殿下は、あなたのことを買い被っているきらいがある。このまま行くと、将来は正妃にするなどと言いかねない」
「え?」
「話は私がなんとか通しておきましょう。こんなのはどうですか? ある日突然殿下に見初められたベアトリスさんはなんとか側妃として頑張ってきたものの、段々と妃教育の重圧に耐えきれなくなった。ある日ぷっつりと緊張の糸が切れてしまい、身を引かせてほしいと行方をくらました──」

『消えてください』と言われ、頭が真っ白になった。そして、ずっと優しい青年だとしか思わなかった目の前の男性が急に恐ろしくなる。
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