俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
「……あなたがやったの?」
「何をですか?」
「二人の婚約者候補よ! 殿下にはこれまで三人の婚約者候補がいた。妹さん以外のふたりは、あなたが殺したのね?」
「ああ、あのふたり」
ランスは思い出したようにぽんと手を叩く。
「婚約者候補を辞退するようにとお勧めしたのですがご納得されなかったので、仕方がなかったのです」
「仕方がなかったって──」
自分の声が震えてくるのがわかった。
あまりに身勝手な言い分への怒りで、冷静でいるのが難しくなる。
「そんなこと、許されるわけがないでしょう!」
「許し? そんなものは必要ありませんよ。いずれ、ときがくれば皆が私に感謝する。愚者が王妃に収まるのを未然に阻止したのですから称賛はされども批判される謂れはありません。それに、殿下は妹のものです。泥棒猫を野放しにするわけにはいきません」
ランスはにこりと微笑んだ。
(この人、狂っているわ)
恐怖で体が震えそうになるのを、ベアトリスは必死に叱咤する。