俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
「アルフレッド殿下のもとを去るのは嫌だ、って言ったら?」
挑むようにランスを睨み付けると、ランスは肩を竦める。
「皆さんそう仰ります。仕方がありませんので、無理矢理にでもそうしていただくまでですね」
そこまで言うとランスは朗らかに笑う。
「安心してください。綺麗なままでご自宅にお戻ししますよ」
心底恐ろしさを感じた。こんなことを、笑いながら言うなんて。
(逃げなきゃ──)
ベアトリスは咄嗟に馬車のドアに手をかける。しかし、外を見て怖じ気づいた。道路はいつの間にか、崖沿いを走っていた。勢いよく走るこの馬車から飛び降りれば、ただでは済まないだろう。最悪この崖から転落して命を落とすだろう。
(指輪……)
ベアトリスは唇を噛む。
どうしてさっき、アルフレッドから贈られた指輪をランスに預けてしまったのだろう。防御術がかけられたあの指輪があれば、最悪の自体は避けられたかもしれないのに。