俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?

 思わず声を荒らげて、サミュエルに聞き返す。

 ベアトリスの周辺に色々と不可解なことが起きていると感じたアルフレッドはカインに命じ、ベアトリスの指輪に様々な加護を追加で付与していた。その中には、王宮を勝手に抜け出そうとすれば反応するような力もあったのだが、それをすり抜けたのだという。

「カインの魔道具の力を一時的に封じることができる者が連れ出した? そんなバカな」

 そんな人間はいないはずだ。魔術が使える人間はほとんどおらず、特に力が強い者は全員が錦鷹団に所属している。だから、錦鷹団以外の人間にそんなことができるはずは──。

 そこまで考えて、アルフレッドはハッとする。

「……錦鷹団の人間ならできる?」

 錦鷹団で魔術に秀でていて、今この場にいない人間──。

「ランスはどこだ?」
「ランスは体調不良とのことで、午後は帰宅しました」
「すぐに連絡を取れ!」

 カインが慌てたように耳元の通信の魔道具に触れる。しかし、すぐに首を振った。

「反応がありません」
「くそっ! ブラットン侯爵家のタウンハウスに行く」
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