俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?

 アルフレッドは身を翻し、厩舎へと走り出した。慌てたように、サミュエルとカインもあとを追いかける。
 そうして向かったブラットン侯爵家のタウンハウスの目前で、アルフレッドはふと前から走ってくる馬車に違和感を覚えた。

(ブラットン侯爵家から出てきた? 随分と古い馬車だな)

 それは、庶民が使うにしても〝やや古びている〟と言わざるを得ないような馬車だった。なぜこのような馬車がブラットン侯爵家から出てきたのか不思議に思いながらも、アルフレッドはブラットン侯爵家に向かう。

 突然のアルフレッドの訪問に、ブラットン侯爵家の執事は大慌てで現れる。

「これは殿下。いかがなされましたか?」
「ランスに会いたい」
「ランス様は体調不良で──」

 目を泳がせる執事の態度に、アルフレッドは違和感を覚えた。腰から剣を引き抜くと、まっすぐに執事に向ける。執事の鼻先から、ツーッと血がしたたり落ちた。

「俺に嘘を言うとはいい度胸だな。次は鼻をそぎ落とすぞ。その次は、首だな」

 凍り付くような冷ややかな視線を浴び、アルフレッドが冗談で言っているのではないと悟った執事は震え上がる。

「申し訳ございません。旦那様は町歩き中とのことで、先ほど馬車を寄越すようにと」

 その場にしゃがみ込んで、土下座をする。
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