俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
 ◇ ◇ ◇


 目の前には、美しい景色が広がっていた。遙か遠くには、セルベス国の王都の町並みが広がっているのが見える。小高い丘にそびえ立つのは、普段ベアトリスが過ごしている王宮だ。

(あんなに遠くに……)

 壮大な景色を前に湧き上がるのは絶望だった。

 ベアトリスは唇を噛む。
 視界に入ってはいるが、あの距離を歩いて戻るのは到底無理だろう。

「ここは、景色がいいでしょう?」

 横にいるランスが、景色を眺めながら目を細める。

「妹が好きで、よく訪れました」
「わたくしを、どうする気? この崖から落とすの?」

 ベアトリスはランスを睨み付ける。

「先ほど言ったはずです。自分で去っていただくか、さもなくば……。いずれにせよ、あそこには戻れません。これが見納めです」

 景色を眺めていたランスは、ベアトリスに視線を移す。

「ご自分で去る気になりましたか?」
「誰が! このシスコン!」
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