俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?

 叫んだ瞬間に、頬に鋭い痛みが走ってベアトリスは体ごと地面に叩きつけられた。

「口を慎め。妹は世界一美しく、聡明だった」

 憎悪を隠さずに向けてくるランスに、ベアトリスは一種の狂気じみたものを感じた。
 ランスの両手が伸びてきて、ベアトリスの首を掴む。

「うぐっ」

 必死にその手を外そうともがくが、力の差があり全く緩まない。

(苦しい……)

 自分もここで死ぬのだろうか。

『お前もいなくなるのかと思った』

 アルフレッドのかすれた声が脳裏によみがえる。

(死ねないわ)

 さっき、ランスはポケットにベアトリスの宝凜の指輪をしまっていた。それさえ取り戻せば──。
 ベアトリスは片手でランスのポケットの辺りをまさぐる。布越しに、固い物が指先に触れた。

(これをなんとか)

 焦って冷静な動きができない。そうこうする間も息が苦しくて、意識が遠のいてゆく。

「ベアトリス!」
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