俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
ベアトリスは今度こそパチッと目を開ける。急に苦しさがよみがえり、一気に咳き込んだ。
ジャンはそんなベアトリスを片手に抱いたまま、ランスを睨み付ける。
「ランス。お前、どういうつもりだ?」
「どういうつもりだも何も、ここにいらしたということは、殿下は既に全てをご存じなのでしょう?」
「お前がこれまでの婚約者候補を殺し、今度はビショップ子爵令嬢に魔道具を渡したのか!」
怒りに満ちた目でにらみ据えるジャンを、ランスは困ったように見返す。
「私は殿下の道を正していただけなのですが、ご理解いただけなくて残念です」
「理解できるわけがないだろう!」
ランスはジャンを見返し、悲しげな表情を浮かべる。
「残念でなりません。……ここでお別れです。殿下」
ランスは一歩、後ずさりする。ハッとした顔をしたジャンが、慌てて手を伸ばした。
「ランス、よせ!」
それは、一瞬のことだった。
「ランス!」
ジャンが伸ばした手が、空を掻く。
ランスの体が後ろに傾き、空を舞った。