俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
「これは……ブルーノ様から?」
手紙の差出人の欄には、懐かしい人の名前があった。ベアトリスの元婚約者であるブルーノ=コールマンだ。
「うん。渡すか迷ったんだけど、ベアトリス宛の手紙を勝手に捨てたらまずいかと思ってさ」
「お気遣いありがとうございます」
ベアトリスはお礼を言う。けれど、この手紙に心当たりは全くなかった。
(なんの用かしら?)
王宮舞踏会で衆人環視の中婚約破棄をされるという暴挙をされて以来、ブルーノから手紙が届いたことなど一度もなかった。ベアトリスは訝しく思いながらも手紙の封を切る。
中から取りだした便箋を開き、文面を目で追う。
そこに書かれていたのは、会って話したいことがあるので王宮の庭園に来てほしいという内容だった。指定された時間は今日の午後四時だ。
「今日の午後四時?」
ベアトリスは時計を見る。
「もう過ぎているじゃない!」
時計は、午後四時半を指していた。もしかすると、ブルーノがこの手紙を出してからここに届くまでのどこかで配達が遅れてしまったのかもしれない。
(どうしよう)