俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
手紙が届くのが遅れたから行かなかったと言えば済む話だし、あんなことをしでかしたブルーノの願いごとをベアトリスが聞く義理もない。
(でも、もしかすると待ちぼうけしているかも?)
ブルーノとまだ婚約者同士としてまだ上手くいっているころ、一度だけベアトリスが約束の時間を勘違いして待ち合わせをすっぽかすという非礼をしたことがある。
そのとき、ブルーノは何時間も根気強くベアトリスを待ち、何かあったのではないかと心配してベアトリスの家に遣いまで出してきた。そういう気遣いができる男性だっただけに、あの婚約破棄は本当にベアトリスにとって衝撃だったのだ。
そのときと今回とではだいぶ事情も違うが、待っていたとしても不思議ではない。
(仕方がないわね)
ベアトリスはすっくと立ちあがる。
「行くの?」
机越しに手紙をのぞき込んでいたサミュエルがベアトリスを見る。
「はい。もういらっしゃらないとは思いますが、念のためです」
ベアトリスは風よけのショールを肩に掛けると、離宮を出た。