俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?

 突き放した言い方に、ブルーノはびくっと肩を揺らす。

「『謝ってくださってありがとう。悪いのはランス様、それにローラです。ブルーノ様はお気になさらないで』とでも言うかと思いましたか? わたくしがあのあと、どんな目に遭ったと思います? そんな一言で済ませられると?」

 ベアトリスは悲しげに首を横に振る。

 その言葉を、あの婚約破棄の翌日に言ってくれたのならばまた状況が違ったかもしれない。けれど、今更そんなことを言われても遅すぎる。

『ベアトリス=コーベットは婚約者の気持ちを奪われた嫉妬に駆られて友人を虐め、それが婚約者本人にばれて婚約破棄された惨めな性悪令嬢である』という噂が流れたせいでベアトリスは婚約者捜しが難航し、王太子の仮初め寵妃というおかしな役目を引き受けることになった。

 挙げ句の果てに、先日は殺されかけたのだ。

 錦鷹団の補佐官の仕事はベアトリスの性格にはとても合っていたけれど、それとこれとは話が別だ。
 ベアトリスがその場を立ち去ろうとしたそのとき、ブルーノがベアトリスの左手首を掴んだ。

「待って! アルフレッド殿下は正妃を迎えられるともっぱらの噂だ。ベアトリスは、それでいいのか?」
「なんですって?」

 ベアトリスは目を眇める。そんな話は初耳だった。

(もしかして、セリーク公爵令嬢?)
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