俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
頻回に合っているという噂も聞いたし、それ以外の相手は考えられない。
これまでは婚約者候補が次々と不慮の事故に見舞われて話が流れていたが、その心配がなくなったので正妃を迎えることにしたのだろうか。
ベアトリスは右手を胸に当てる。
ズキッと痛みを感じたが、それを無視してブルーノを見つめた。
「それがなんだって言うの? あなたには何も関係ないことだわ」
「ベアトリス! 俺は……」
「ブルーノ様。わたくしはもう、あなたの婚約者ではありません」
ベアトリスは左手を振り、掴んでいるブルーノの手を振り払う。
「さようなら」
ブルーノの顔に、絶望の色が浮かんだ。
ベアトリスはくるりと向きを変え、離宮のほうへと歩き始める。
「ベアティ」
足早に庭園の小道を歩いていると、自分を呼びかける声がした。