俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
「え?」
ハッとして声のほうを見ると、木の木陰に背を預けてジャンが立っていた。
「団長。どうしてここに?」
そう聞いたけれど、すぐにサミュエルから話を聞いたのだろうと気付いた。ブルーノから来た手紙を開けたとき、彼の側近であるサミュエルも一緒に内容を見たのだから。
「大丈夫か?」
「大丈夫? それは、わたくしが傷ついていないかという意味ですか?」
ベアトリスは自嘲気味に笑う。
ジャンはきっと、少し離れた場所からベアトリスとブルーノの様子を全部見ていたのだろう。魔道具を使って会話の内容も聞いていたかもしれない。
「大丈夫ですわ。だって、とっくのとうに終わったことですもの」
「そうか」
ジャンがふっと笑う。
「気分転換に、少し散歩でもしていくか? 温室ではバラが見頃を迎えているようだ」
「いいのですか?」
「ああ」
ジャンは軽く頷くと、歩き始める。ベアトリスは慌ててそのあとを追った。
「わあ、綺麗……」