俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
 背後の扉が静かに閉められると、ベアトリスは横をキッと睨んだ。

「殿下! やり過ぎです!」
「何が?」

 ベアトリスの抗議に、アルフレッドは小首を傾げる。

「周囲に人がたくさんいる中、あんな……」

 侍女達の衆人環視の中で唇ぎりぎりの場所にキスをされたことを思い出し、ベアトリスの頬がまた紅潮する。

「周囲には、〝仲睦まじい新婚夫婦〟と思わせておいたほうが何かと都合がいい。なにせ、夜だけでなく昼もずっと横に侍らせているのだからな」
「確かにそうですが──」

 ベアトリスは口ごもる。

(わたくしはこの役目が終わったあと、本当に誰かと結婚できるのかしら……?)

 このままでは、『一時期王太子の寵愛を一身に受けたもののすぐに飽きられてあっさり捨てられた挙げ句、誰にも見初められずに寂しい人生を送る哀れな令嬢』という不名誉な肩書きが増えてしまう。

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