俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
ベアトリスはぷくっと頬を膨らませる。
アルフレッドに愚痴ったところでどうこうなる問題でもないのはベアトリスもわかっている。
むしゃくしゃする気持ちを落ち着かせようと紅茶を飲む。芳醇な味わいが口の中に広がると、幾分か気持ちが落ち着いた。
昨日、ベアトリスは王都にはびこる違法薬物密売組織の摘発に向けての囮捜査に当たった。
この違法薬物密売組織は一年位前から活動が目立ち始め、これまでは王都騎士団が中心となって捜査に当たっていた。しかし、首謀者に『自分には王族の庇護がある』と言っている者がいるとの情報を得て、錦鷹団でも捜査に着手したのだ。
王族の名を騙る犯罪組織の横行は許されることではない。さらには、密売組織が違法薬物を密売するだけでなく、違法薬物を投与した女に身を売らせてその利益を吸い取っていることまで判明して、一刻も早い解決が求められていた。
しかし、検挙されるのはどれも末端の売人ばかりで組織の中枢部に関する情報が全く得られない。
そのため、さらなる関係者を洗い出そうとベアトリス自らが志願し、今回の囮捜査が計画されたのだ。
組織売春の話を聞いたとき、ベアトリスは大いに怒った。
本人が希望して商業娼婦になったのならばいざ知らず、何も知らない若い女性を騙して違法薬物を投与して身を売らせ、さらにその違法薬物をダシにその行為を継続させてお金を吸い取るなんて。人生を台なしにする、許しがたき暴挙である。
(絶対に許すまじ!)
いきり立つベアトリスは難航する捜査の突破口になればと思い自ら囮捜査の囮となることを志願した。
その結果が、昨晩の出来事だ。