俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
会話が途切れる。
アルフレッドは指に絡めていた髪を外し、ベアトリスの左手を取った。
「男に掴まれたのはここだったか?」
「え? はい、そうです」
ベアトリスは戸惑った。
(報告書に書いてあったのかしら。それとも、誰かに聞いた?)
確かにならず者に掴まれたのは左手首だったのだが、なぜあの場にいなかったアルフレッドがそれを知っているのだろうと疑問を覚える。
「はい。でも、怪我もないですし大丈夫です」
ベアトリスは慌てて自分の手を引こうとする。けれど、アルフレッドの手は思ったよりも力強く、ベアトリスの手が逃げることを許さなかった。アルフレッドの手が、優しくベアトリスの左手首を撫でる。
「あまり、無理をするな」
「でも、わたくしは一番の新入りとは言え、錦鷹団の団員です。皆さんと同じように役に立ちたい」
「お前は騎士ではないだろう。俺がお前をあそこに入れたのは、俺の補佐官としてだ」
ベアトリスはそれを聞き、眉根を寄せた。
「その割に、全く錦鷹団にいらっしゃらないですよね? むしろ、ジャン団長の補佐官と言った方がしっくりきます」