俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
確かにベアトリスはアルフレッドから、お飾り寵妃の皮を被って補佐官として働けと命じられた。しかし、肝心のアルフレッドが全く錦鷹団に来ないので、彼の補佐官としてやることが何もない。指示事項はいつも、ジャン団長を通してだ。
アルフレッドはほぼ毎日錦鷹団のメンバーと顔を合わせていると言っていたが、あのあともベアトリスは一度もアルフレッドに遭遇していない。
嘘をつかれたのかと思ってサミュエルやランスに確認してみたが、ふたりとも〝会っている〟と答えた。本当に不思議でならない。
(妃教育の時間と殿下がいらっしゃる時間が被っているのかしら?)
どうしてだろうと疑問を覚えて考えていると、急にアルフレッドに腕を強く引かれた。ベアトリスはその拍子にバランスを崩し、アルフレッドの胸に倒れ込む。
慌てて起き上がろうとすると、顎をくいっとあげられる。思った以上に近い距離にアルフレッドの秀麗な美貌があり、胸がドキンと跳ねた。
「なんだ? 俺と会えなくて、寂しいのか?」
アルフレッドは意味ありげに口の端を上げる。
「な……っ!」
顎に添えられた指がつつっと頬を撫でた。いつになく近い距離感に、鏡を見なくとも自分の顔が赤くなるのを感じた。
「安心しろ。お前以外の女の元には一切通っていない」
「そんな心配はしていませんっ!」