俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
「何よ。意地悪したり、優しくしたり……」
ベアトリスは手を広げて天井にかざし、今貰ったばかりの指輪を見つめる。思い返せば、元婚約者のブルーノから宝石を贈られることなど、ただの一度もなかった気がする。
「綺麗」
ピンク色の可愛らしい石は、ローズ・クォーツだろうか。昔読んだ外国語の本に、ローズ・クォーツは愛と美の女神に捧げられた宝石だという記載があったことを思い出す。
「あ、そういえば……」
ふと、机の上に先日アルフレッドから贈られた外国語の本が置きっぱなしになっていることを思い出した。その日のうちに全部読んでしまったが、期待通りの素晴らしい作品だった。
「久しぶりに翻訳でもしようかな」
大好きな本をたくさんの人に読んでもらえるのは、とっても嬉しい。
共通の話題が広がるし、何よりも自分が翻訳した本を読んで目を輝かせる人々の顔を見るのが喜びだ。
「よし、頑張ろう!」
ベアトリスは机に向かって座り本を開くと、早速ペンを取ったのだった。