翔ちゃんは、幽霊なんて信じな、い?
「……パソコンに引きずりこまれるとか、ある訳ないだろ」
「はい?! え、翔ちゃん助けてくれたじゃん! パソコンの画面に私嵌ってたでしょ?!」
「知らねーけど。お前が何かワーワー騒いでたのは覚えてる」
「……もしかして翔ちゃん、かなり寝ぼけてた……?」
「あぁ? そりゃお前だろ?」
「私?! そんなこと、ないと思うけど……?」
そう言われてしまうと、なんだか急に自分の記憶に自信がなくなって言葉が尻すぼみになる。
ワンチャンあれは私の白昼夢だという可能性も捨てきれないとは言えない。
「ま、やっぱ幽霊なんていねーわな」
「え、ぇえー……そうかな……」
「証拠がねーよ、証拠が」
「……それはそうだけど。あれ? 翔ちゃん手怪我してない?!」
翔ちゃんの白く美しい右手に、爪で一本線を短く引いた様に擦り傷が付いていた。
「本当だ。どっかで引っ掛けたか」
「もしやお化けの仕業?! 大丈夫?! 痛くない?! 絆創暮あるよ!!」
「お化けって、んな訳ねーだろ。それにこんなん痛くもねーって。大袈裂だね、お前は」
あわあわとカバンから絆創膏を取り出そうとする私の頭を翔ちゃんがポンと一回撫でた。
「……そ、ソウ?」
頭撫でられて嬉しいのとガチ照れが混ざり合って、顔が変な風にニヤるのが自分でわかる。
……でも。
翔ちゃんの手をもう一度よく見る。
普通の擦り傷の筈のそれは、学校に来る前には無かった気がする。
何でだろう……なんか気になるな……。
なんとなくモヤモヤとして、学校を振り返る。
満月に照らされた学校は、不気味とも言える様なそうでもないような雰囲気を醸し出していた。