翔ちゃんは、幽霊なんて信じな、い?
幻の4階の怪(前編)
百鬼高校は3階建ての古い校舎だ。
深夜0時に3階へ登る階段の13段目を踏むと、幻の4階へと繋がる階段が現れるらしい。
幻の4階はお化けの学校であり、長くいると二度と元の世界には戻れなくなる、そんな噂が囁かれていた。
ある夜、1人の女子生徒が学校を訪れた。
昼間、友達とこの怪談についてちょっとした小競り合いになり、売り言葉に買い言葉で1人で試す事になってしまったのだ。
0時より少し前に3階へ続く階段に辿り着き、13段目を0時ちょうどに踏める様、調整して一歩一歩進む。
秒針が12に回った瞬間目を瞑る。
顔を上げると階段が、続いていた。
まるで初めから4階が存在するかのように上へ上へと伸びている。
彼女は急に怖くなった。
まさか本当に出て来るとは思ってなかったのだ。
でも、啖呵をきってしまった手前、何もせずに戻る訳にもいかない。
恐る恐る階段の踊り場から教室を見てみる。
教室の中までは見えないが、パッと見、3階とほぼ変わらぬ様子だった。
もしかして、自分が階を数え間違えたかも……。
緊張していたし、きっとそうに違いない。そんな風に考えるとちょっと気が抜けた所で不教室札が視界に入る。
4-4……?
書き間違え?
いや、その奥の教室も、そのまた奥の教室も、全部教室札は4-4。
まさか。
そう思った時だった。静かだった校舎にチャイムが鳴り響く。
途端に教室がザワザワと騒がしくなる気配がして、閉じていた教室のドアが内側から開けようと振動する。
やばいと思い、女生徒は階段まで走った。階段は段々と薄くなってる。急がなければ。
あ!
階段を降りる前に靴が片方脱げてしまう。が、そんな事気にしてられなかった。
転げ落ちるように、本来の3階まで降りきる。今度は教室札は3-1、3-2、と規則正しく並んでいた。
後ろを振り向く。最上階の3階に、上へ続く階段なんて見あらなかった。
女子生徒は何とか逃げきれたが、脱げた靴は、どこを探しても見つからなかった。