翔ちゃんは、幽霊なんて信じな、い?
 その後何回か行き止まり目指して歩いてみたが、着いたと思っても壁から視線を外した瞬間行き止まりが遠のく。

 流石にこの現象には翔ちゃんも多少驚いてるらしく、少し困惑げな表情だ。

「辿り着けないというよりは、何回も同じ道を歩かせられてる感じだな」

「そんな……私達ここから出られないって事? ご飯とかどーする?!」

「気にするのそこかよ」

 でも、そうだ。ここには食べ物も飲み物もなくても翔ちゃんがいるじゃないか。

「……つまり翔ちゃんと二人暮らしが始まるって事?!」

「いや始まんねーけど」

「翔ちゃん」

「あ?」

「ふっつか者ですが、よろしくお願いします!」

 頭を下げて手を差し出す。ペシッと手を叩かれた。

「帰ることを早々に諦めんなって。第一食いもんなくてすぐ詰むっつーの」

「翔ちゃんとなら、そんな日々も構わないよ!」

「いや俺が構うから。つかひっつくな。暑い」

 触れてた腕を引き剥がされ、ペイっと放り投げられる。どうやら本気で暑かったらしい。

「ひどい……ちょっとでも雰囲気を和まそうと空元気出してるのに」

 あんまりな態度にわざとらしくメソメソしてみる。どうせあしらわれるだけだと思っていたのだが、翔ちゃんが心配そうに私の顔を覗き込む。

「何、怖い?」

「も、もし怖いって言ったら何かしてくれるの?」

眉を少し下げたその殊勝な表情が可愛くて、つい調子に乗ってしまう。

チューでもあわよくばしてくれるんじゃないだろうかと期待を込めた目で翔ちゃんを伺う。

「あいた!」

スッといつものクールな表情に戻った翔ちゃんにデコピンで返された。
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