翔ちゃんは、幽霊なんて信じな、い?
「アホなこと言ってないで帰る方法探すぞ。朝までに帰らねーと、お前の両親も心配すんだろ」

「私もう高校生だし、一晩くらいならどうってことないと思うけど」

「……そんな訳ないだろ。大切にされてる子どもなら一晩だろうが、親は絶対に心配するよ」

不意に翔ちゃんの口調が固くなる。

「俺の兄貴がそうだった」

「……翔ちゃん、お兄ちゃんいたんだ」

 私は平常心を装っていたけど、大分驚いていた。
 だって翔ちゃんとは、あまり踏み込み過ぎないのが一緒にいる暗黙のルールみたいなものだったから。

 私を信用して秘密を開示してくれてるのか、実は誰にでも話してるのかは、表情からは読み取れない。

「……最近までいないも同然だったけどな。2年前、自由にやりたいって勝手に出てったきりだった。大人の家出みたいなもんだな。でも最近戻って来た」

「そうなんだ。良かったね?」

 翔ちゃんは何も答えない。

「親の愛っていうのか? そーいうのを一身に受けて、兄貴は大層両親に可愛がられて、心配されてたよ。でもそれが重荷で、出てったんだろうって。良いご身分だよな……」

 そう話す目はどこか達観したようで、そして少し、哀しげに見えた。

親の親の愛を一身

 その言葉が私には不思議だった。

 それはまるでお兄さんだけが愛されてる、みたいな言い方だったからだ。

 私には何で翔ちゃんが、そんな事を言うのかわからなかった。
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