翔ちゃんは、幽霊なんて信じな、い?
 だって翔ちゃんは見た目もそうだけど、言わずもがな中身も素晴らしい。

意地悪そうに見えて (まあ実際冷たいところもあるんだけど)見捨てきれないというか、爪が甘いというのか。

 最後の最後は仕方ないなぁって救ってくれる優しさがあるのを知っている。

 だから、もし翔ちゃんの言ってることが本当だしたら、翔ちゃんの両親が信じられなかった。

 それとも翔ちゃんのはいわゆる認識不足で、『親の愛情は子どもには大きくなるまでわからない』とかいうヤツなんだろうか?

 でも、その言葉だけでは翔ちゃんの哀しげな瞳は片付けられない気がするけど、それ以上は踏み込むなと、言われてるようで聞けなかった。

「……えっと、そうだね、やっぱ帰んないとだよね。家族だけじゃなくて、友達とかも心配しちゃうから帰る方法探なさきゃだよね……」

 なんて答えれば良いかわからなくて、しどろもどろになる私を見て、翔ちゃんは気を取り直す様に笑う。

「ま、腹も減って来たしな、早く帰るか。ほら、行くぞ」

「……うん」

 翔ちゃんが廊下を歩いてく。ポケットから出たその右手は、なんだかとても寂しそうに見えて握りたくなる。
でも、その手を握る資格も覚悟も私にはまだなくて、なんだか切なかった。

(冗談でならいくらでも、そういう事が出来るのにな……)
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