翔ちゃんは、幽霊なんて信じな、い?
ぐー
廊下に緊張感のない低い音が響き渡る。
私のお腹だった。
「……緊張感ないのはお前の腹じゃん」
「こ、これは仕方ないの! 晩御飯食べてから6時間以上経ってるから! もう! 翔ちゃん何か食べ物ちょうだい!」
「ある訳ないだろ」
そう言いつつもガサゴソと翔ちゃんがポケットの中を探ってくれる。
「ラス一飴があった。ほらよ」
振ったら出てくるタイプの飴を手に出してもらう。
「ありがとう! いただきまっす、あ!」
手の上を飴がバウンドし、コロコロと廊下を転がる。
「貴重な飴が!」
転がった飴が片方だけ落ちていた靴にぶつかり止まる。それを見ていた翔ちゃんは、靴にかけより辺りを見渡した。
そして、行き止まりの壁の垂直方向の壁に向かってそっと手を伸ばす。
「翔ちゃん何して……え?!」
本来なら手をつけるはずの壁に、翔ちゃんの腕がめり込む。いや、めり込むというよりはすり抜ける感じに見えた。
「な、なんで?! どうして?!」
思わず壁に近づこうとすると手で制される。
「危ないから勢いよく行こうとすんな。多分この壁……いや壁に見える所が3階へ通じる階段だ」
「え、どういう根拠で?!」
「靴だよ。怪談に出て来た女性とは階段の前で靴が脱げたんだ。どういう理由かは知らないが、隠されてたみたいだな」
「あ……そっか! さすが翔ちゃんだね!じゃあ今の内に帰ろ……ぐぇっ!」
「だから待てって」
翔ちゃんが私の首根っこ掴んで引き止めると、少し考えてこんで辺りを見渡す。
階段も見つかったというのに何を躊躇うことがあるんだろうと思っていると、翔ちゃんはネクタイとベルトを外し始めた。
「翔ちゃんなな何をして?!」
「やっぱ一本じゃ長さが足りねーか。お前のネクタイも貸して」
「ええ?!」