翔ちゃんは、幽霊なんて信じな、い?
「って話だったけど、出てこないね」
「……そうだな」
明け方の朝4時50分。
百鬼高校の旧校舎にて。
私と翔ちゃんは件の四次元ババアの怪談を目指して、旧校舎の鏡の前に来ていたのだが、噂の4時44分を過ぎても鏡はうんともすんとも言わなかった。
「なんかお化けパソコンの時のデジャブ感じるね」
「まあ出てこないなら仕方ない。帰るか」
「それもデジャブ!」
「イヤか?」
翔ちゃんが試すように私を見る。
(昨日言った事を本当にわかってるのか疑ってるんだな)
「わかってますよー翔ちゃんが帰るなら一緒に帰りますー」
少し不満気にそう言うと翔ちゃんがニヤリと笑う。
「お前なら、まだいようって言うかと思ってたけど?」
「……だって翔ちゃんと話せなくなるの嫌だもん」
それに昨日は有耶無耶になってしまったが、翔ちゃんの手の傷も実はまだ気になっていた。
なんとなく手の傷と三不思議と関係がある気がして、不安だったのだ。
翔ちゃんと一緒にいられるから夜の探索は可能な限りしたいのけれど、それで翔ちゃんに何かあっては元も子もない。
「ハッ、そりゃ素直で良い心がけだな? でもまあ元はと言えば俺から言い出した事だから、今更ついてくるなとは言えねーし、それにそう言ったところでお前の場合コソコソ付いてきて、逆に危なそうだし? そうやって
言う事聞いてくれてなによりだよ」
そう言って私の頭をポンポンと (俗に言う頭ポン!!) してくれる翔ちゃん。
「へ、へへ」
気持ちの悪い笑い方をしてるのは自覚しているけど、仕方ない。顔に力を入れても自然ににやけてしまう。
(な、なんかもしかして今、良い雰囲気じゃない?!)
(もしかして……告白チャンス?!)
(でも心の準備が……でもチャンスの女神様は前髪しかないとも言うし!)
(……)
(よしっ!!)
「あ、あのねッ翔ちゃん、私」
「そんなに力入れて掴まれると流石に痛えよ。何?」
無意識に翔ちゃんの腕をギュウウウゥッと掴んでいたらしい。
しかも翔ちゃんに触れてるその手は緊張で手汗まみれで……勢いよく離す。
「ご、ごめん!」
「いや別に謝られる事じゃねーけど?」
翔ちゃんは何も気にしてないという風に見つめてくる。
それでも私は、肝心な時にこんな手汗まみれの自分が勝手にすごく恥ずかしくなって、急いでその場を後にした。
「ち、ちょっとトイレ行ってくる!」
「あ、おい!」