翔ちゃんは、幽霊なんて信じな、い?

「どうした?!」

走って駆けつけてくれたらしい翔ちゃんの腕に縋る。

「し翔ちゃん!! か、鏡にお婆さんのお、お化けが出た!!」

翔ちゃんが不思議そうに私の後ろを見る。
恐る恐る私も見てみる。

しかしそこにいたのは、

「お、女の子!? え、な、なんで?!」

「お婆さんのお化けって私のこと? お姉ちゃんひどい……」

 現れた女の子がシクシクと泣き始める。

(え、もしかしてお化けじゃない……? いやでもこの時間帯に旧校舎にいる子どもって怪しすぎない?!)

「うわーん!」

「ご、ごめんね?! で、でもなんでこんな所にいたの……?!」

 本格的に泣き始めた女の子に平謝りするが、女の子はヒートアップする一方だ。

(だ、だめだ私じゃ!)

「し、翔ちゃーん」

 泣きつくとやれやれという顔をして、翔ちゃんは女の子の目線に合わせて腰を下ろす。
 
「……な、大丈夫?」

「……お兄ちゃん、だれ?」

「この学校の生徒だよ、こいつも。怪しい奴じゃない」

 コイツと言われて女の子が私を見た。

「あの意地悪なお姉ちゃんも?」

「意地悪?!」

「ああ、悪いやつではない」

「翔ちゃん……!」

 思いがけない庇う言葉に感動すると、翔ちゃんがフッと笑う。

「ま、別に良いやつでもないけどな」

「翔ちゃん?!」

上げといて下げるとかひどいな! でもそんな所も可愛いので許す!

「……ねえ、お兄ちゃんお姉ちゃん。私迷子なの……お母さんが迎えに来てくれるまで一緒にいてくれる?」

 女の子が試す様な視線で私と翔ちゃんを見る。

 私はドキリとした。

だってもしかしてお化けだったりしたら、素直に返事したらよくないんじゃないか、とか。

こんな時間にいる子どもって……と頭に浮かんですぐには返事できなかったのだ。

 流石に子どもの前でこんな態度はどうだろうと思うが、ついオタオタしてしまう。

しかし翔ちゃんは違った。
< 27 / 46 >

この作品をシェア

pagetop