翔ちゃんは、幽霊なんて信じな、い?
「嬉しい、ねぇ……だったら良いけどな。我ながら随分と可愛げのねーガキだったからな」
「え、そうなの?」
思わず口を挟んでしまった。
また突っ込まれちゃう!とハッとして女の子を見る。が、女の子は翔ちゃんの背に顔を押し付け寝ていた。
「婆ちゃんが色々連れてってくれてんのに、婆ちゃんじゃ嫌だとか母さんや父さんが良いとか……可愛げのカケラもねー事を言ってたよ」
「……そっか」
「でも何でかわかんねーけど、婆ちゃんが背中におぶってくれると、なんか心地良くて、それは悪くないなって子どもながらに毎回思ってた」
「だから俺がいつか婆ちゃんよりデカくなった時に、婆ちゃんが自分で歩けなくなってたら、俺が婆ちゃんの脚になってどこでも行きたい所連れてってやるって言ったんだよ」
翔ちゃんの思い出を話す声はいつもより優しく、それがとても大切な思い出である事を物語っていた。
「お婆ちゃん喜んだでしょ?」
「いーや? 縁起でもねーこというなって言われた。連れてってくれるだけで十分だって」
「……そっか。でも楽しみだね! お婆ちゃん、翔ちゃんみたいなイケメンの孫とどっか行けるなんてさ、自慢出来ちゃうし」
翔ちゃんが柔らかく語る思い出に私まで嬉しくなって、そう言うと、翔ちゃんは顔に影を落とした。
「だと良かったけどな。俺が婆ちゃんよりデカくなる前に婆ちゃん、死んじまったから」
「あ、ごめん、私無神経で……」
ちょっと考えればその可能性くらい想像出来ただろうに、何て無神経な事を聞いてしまったんだ、と落ち込むと、翔ちゃんがフッといつものように笑った。
「気にしてねーよ。別にお前が無神経なのは今に始まった事じゃないだろ?」
「……でもゴメン」
「……泣くなよ? 今泣いたって慰めて
やれねーからな」
ほら、と背中の女の子をこっちに向ける。
すやすやとあどけない寝顔が可愛いかった。
(寝てると天使とはまさにこの事か……)
可愛げのない事もされたし、イマイチ正体が不安だったけど、安心しきった寝顔が全てを帳消しになってしまった。