翔ちゃんは、幽霊なんて信じな、い?
「……ねぇ翔ちゃん、本当にやるの?」
満月が輝く夜だ。
カミサマの噂通り百鬼高校の旧校舎の一番奥の空き教室の前に私と翔ちゃんは来ていた。
教室は確かに鍵はかかっていなかったが、錆びついてるのか、立て付けが悪いのか、扉が中々開かない。
私は先日の女の子のカミサマの話を言葉を思い出していた。
『気をつけて、カミサマは本物だよ』
「どうした? いつもお前の方がヤル気なのに。怖気付いたか?」
「……いや、その、なんていうか願い去々もそうだけど、お化け退治したっていう証とかそんなのないのに、良いのかなっていうか……」
本当の理由はそんなんじゃない。
だけどただ不安になったからという理由だと、翔ちゃんは俺だけで行く、と言われそうで言えなかった。
しかし翔ちゃんは、ああ、それなら、と左足のくるぶしをめくって見せた。
そこに目新しい傷があった。どことなく右手の傷と形が似ている。
「お前に指摘されるまでは只の偶然かと思ってた。でもやけにタイミングが揃うしさ。このくるぶしのは、幻の4階から帰ってきた夜に付いてるのに気づいた。で、昨日ついたのがコレ」
翔ちゃんが前髪をめくる。そこにも目新しい傷が出来ていた。
「……もしかして昨日頭が痛いって言ってたのって」
「他のよりは何故か小さいけど、多分タイミング的に、コレが証なんだろうな」
「翔ちゃん。やっぱり本当にやめよう?
そんな傷が証だなんて、なんか危なすぎるよ」
「何言ってんだよ、ここまで来たんだやるに決まってるだろ?」
「……どうしてそんな急にやる気なの? なんか今日の翔ちゃん変だよ……」
「……別に。これで何も出てこなかったら
それはそれでちょうど良いだろ? 証明終了だ」
翔ちゃんが口早に言い切る。