翔ちゃんは、幽霊なんて信じな、い?
行くあてもなく、かと言って帰る気もせず、旧校舎の中を歩いてると音楽室の教室札が目に入った。ピアノの音が聞こえる。
恐る恐る中を覗くと、そこにいたのはワルツを踊る外国人だった。その顔には教科書で見覚えがあった。
「あれはベートーヴェン? 演奏してるのは、ショパンかな……」
女の人はエリーゼのためにのエリーゼだろう。彼らは月明かりの下でそれは楽しそうにワルツを踊っていた。
「素敵……」
本来怖いはずのそれは、何だかとても美しくて感動的で、私は翔ちゃんと出会った時の事を思い出していた。