翔ちゃんは、幽霊なんて信じな、い?

行くあてもなく、かと言って帰る気もせず、旧校舎の中を歩いてると音楽室の教室札が目に入った。ピアノの音が聞こえる。

恐る恐る中を覗くと、そこにいたのはワルツを踊る外国人だった。その顔には教科書で見覚えがあった。

「あれはベートーヴェン? 演奏してるのは、ショパンかな……」

女の人はエリーゼのためにのエリーゼだろう。彼らは月明かりの下でそれは楽しそうにワルツを踊っていた。

「素敵……」

本来怖いはずのそれは、何だかとても美しくて感動的で、私は翔ちゃんと出会った時の事を思い出していた。
< 35 / 46 >

この作品をシェア

pagetop