翔ちゃんは、幽霊なんて信じな、い?
もう何もする気にならず、体操座りのまま額を膝につけていると、足音が聞こえる。

先生に戻ってこいと注意されてはいけないと焦って顔を上げる。

『なぁ、あんたサボり?』

そこにいたの美少年と名高い日野翔次郎だった。

何で私なんかに声を、と疑問に思ってると、翔次郎君は私の答えを待ってるらしく首を傾けた。
熱射の中、彼の首筋に汗が伝う。
ただ首を傾けたその仕草が何だかやけに色っぽいやらカッコ良いやらで、私は更に困惑した。

『あ、違います……私は、その』

『フォークダンスの練習、通しで再開だって。サボってる奴呼んでこいって言われたんだけど、もしかして怪我してる?』

 言い淀む私に翔次郎君が顔をぐいっと近づける。

『い、いや、そんなことは……な、何でそんな事聞くんですか?』

『お前の横にティッシュ丸めた山があるから。転んだのかと』

『あ、あぁ! こ、これは違くて!汗拭きシートと除菌シート!私緊張すると手汗かいちゃうから今日っフォークダンスの練習だから持ってきててエチケットとして、常備しててそれで……』

聞かれてないのに説明してしまい、急に恥ずかしくなる。

『その、でも、ペアの男の子が繋いだ時、気になったみたいで。もうペア組みたくないって言われてしまって……』

『先生に言っても、そんなの、仕方ないし、それに、誰と組んでもきっと、嫌だろうし、だ、だから、その、ココで休んでそのまま、サボろう、かと……』

言ってて自分の声が震えて涙声になるのがわかった。

泣くと余計に惨めさが増すようで、下を向く。影になった地面が滲んで見えた。
だって本当は、好きだった七海君と手繋けると思って密かに楽しみにしてたから。

しかもその状況をこんなイケメンに自ら説明してるのもすっごい惨めだった。


『それで? お前自身はフォークダンスでたいの? それともサボりたいの?』

『……出なくて、良い』

嘘をついた。でも、これが1番穏便だ。

体育の授業如きでこれ以上傷つきたくなかった。体育の成績悪くなっても良いから、当日までぜんぶ休もう、と考えた。

『……フっ、しょーもな』

それを翔次郎君が馬鹿にしたように鼻で笑う。そりゃこんなカッコ良い子に私の悩みなんかわかる訳ないが、でも笑われる筋合いもない。
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