翔ちゃんは、幽霊なんて信じな、い?
「おきて」
暗闇の中、私を起こす声がして目が覚めた。
「……あれ、ココは……?」
暗闇の中に髪の長い女の人がいた。
直感的にその人がカミサマだとわかる。
緊張して姿勢を正すと、カミサマがすっと近づいて来た。
「良かったわ、気がついて。ずっと翔ちゃん翔ちゃんって呟いていたから」
「あ! そ、そうだ!翔ちゃんは?!翔ちゃんは無事ですか?!」
「本来の願い手の事ね?彼なら貴方のお陰で大きな怪我はないわ」
「よ、良かったー……あ!すみません、カミサマなのに舐めた口を」
我に帰って謝ると、カミサマは全く気にしていないという雰囲気で首を振る。
噂で聞いていたカミサマ像と全然違うように感じた。
「それより貴方の願い事は?」
「私の、ですか?」
「ええ。ココに来た人の願い事を叶えるのが私の約束だもの」
「……それって他の人の事でも大丈夫ですか?
」
「それは本来ここに来たがってた彼の事ね。良いわ。願いは?」
「え?えーと、そういえば何だろう……?!」
ヤバい。よく考えたら具体的に知らなかった。私が勝手に立てた予想で両親にお兄ちゃんより愛されると言ったが、あくまで予想だ。違う可能性も十分にある。
どうしようとアワアワしていると、カミサマが不思議そうに尋ねる。
「貴方は、彼の事が好きなのね」
「えッ!? あ、はい……」
「他人の願いに対価である貴方のイノチをかけるのね?」
命。
改めてそう言われて、心臓がドクンと鳴る。
そうだ、噂でも対価が必要ってあったんだった。
具体的には描いてなかったけど、それが命であることは、想像がついた。