翔ちゃんは、幽霊なんて信じな、い?
さよなら翔ちゃん、どうか幸せに……。
出来れば私の事も1年に1回は思い出して。
(つまり100年生きるとして、生涯ではあと83回くらいは思い出してほしい……いや、もっと長生きして欲しいからあともう10回くらいは……)
ごちゃごちゃと翔ちゃんに想いを馳せていると、いつまでも痛みがやってこないことに気づく。
そっと薄目を開けてみるとカミサマが不思議そうな顔をしていた。
「貴方いつまでそうやってるの?もう動いて良いわよ」
「へ?動いて良いとは……?」
カミサマを見ると、その手には髪を一房持っていた。
感覚的に自分の右の髪を掴む。少し短くなった部分があった。
少量だしよく見ないとわかんないから全然良いんだけど、何で……?
「はい!これで願いは叶えたわ!対価も貰ったし!」
頭にハテナが浮かびまくる私を他所にカミサマが満足気に切った髪を見せる。
「対価って、もしかして髪の毛……?」
「そうよ」
「い、いのち、とかいう話では?!」
「まあ髪は女の命とも言うわね」
シャレかよ!と言いそうになるのを必死で堪える。
「だって私、『髪様』よ?髪が原動力なのよね」
「あ……そういう感じですか……」
「ああ、言っとくけど、証だなんだって言ってた傷は気のせいよ?タイミングが重なっただけなんだから」
「え?! そうなんですか?!」
「貴方たち真っ暗な中で歩き回るんだから、怪我の一つでもそりゃ知らずにするでしょうよ。貴方だって気づいてないだけで、脛に痣できてるわよ?」
そう言われて脚を見ると、何処かでぶつけたらしい痣が小さく出来ていた。
全然気づかなかった。